光と影の“余市”発、domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキの真実
Andrew Walker
余市の丘を歩いていると、畑の“年”が伝わってくることがあります。domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキは、そんな感覚を形にしようとする小さな家族経営のワイナリーです。2015年に鈴木淳之氏が開設し、自然農法と収量の制限、そして畑と品種の個性を優先する造りで知られています。
北海道余市のdomaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキは、2015年に開設された小規模家族ワイナリー。5〜6ヘクタールの畑と20年経過のツヴァイゲルトの木を受け継ぎ、自然農法で農薬・化学肥料を使わず、収穫量は約15トンに制限。品種の輪郭を引き出すテロワール重視のワインを展開します。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| ワイナリー名 | domaine atsushi suzuki(ドメーヌ アツシ スズキ) |
| 所在地 | 北海道余市町登町(余市郡余市町登町1731) |
| 創業 | 2015年 |
| 経営形態 | 家族経営の小規模 |
| 畑 | 5〜6ヘクタール、20年経過のツヴァイゲルトの木を継承 |
| 主要品種 | ツヴァイゲルト/ケルナー・ミュラー・トゥルガウ/ピノ・ノワール/シャルドネ |
| 収穫量の目安 | 約15トンに限定 |
| 農法・薬剤 | 自然農法(化学肥料・農薬なし)、硫黄は瓶詰時に極少量 |
| 醸造施設 | 昭和初期の札幌軟石の石蔵(りんご保管用)を改装 |
余市で小さく始まった「domaine atsushi suzuki」:2015年の開設と家族経営
余市は、国内ワインで“北海道らしさ”を探す人が最初に名前を挙げる土地の一つです。冷涼な気候で、熟度が一気に進むわけではない。その分、収穫までの時間が畑の判断を要求します。domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキも、その条件を逃げずに引き受けるタイプのワイナリーです。
代表は鈴木淳之氏。2015年にワイナリーを開設し、家族経営として規模を絞って運営しています。派手な設備投資よりも、畑と収量、そして“その年の空気”を優先する姿勢が、ワインの方向性に直結していると見られます。
畑の“土台”は継承された5〜6ヘクタールと20年のツヴァイゲルト
畑づくりは一発勝負ではありません。domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキが掲げる土台は、すでに歩んできた時間にあります。畑は以前の農家から5〜6ヘクタールの土地と、20年経過したツヴァイゲルトの木を受け継いでいます。
“古い木”は、畑の個性を出すための素材にもなります。根が深まりやすく、収量の上限を調整することで、ぶどうの質感が変わっていくことがあるからです。ワイナリー側がツヴァイゲルトを中心に置くのも、この継承の影響が大きいと考えられます。
収穫量は約15トン:自然農法と“量より質”の判断
ワインの味は、収穫量の決め方で早い段階から決まります。domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキは収穫量を約15トンに限定。ここでの“限定”は、単に少ないという意味だけではありません。年ごとに畑が持つ余力を見極め、ぶどうを引っ張りすぎないための枠です。
農法は自然農法。化学肥料や農薬を使わないとされています。瓶の前にあるのは畑で、畑の管理がそのまま醸造の材料品質に跳ね返ります。さらに硫黄については、瓶詰時に極少量使用する方針。最終段階の調整を最小限にし、香りや味の輪郭を崩しにくくする狙いが読み取れます。
自然農法でも“放任”ではない
自然農法といっても、畑が勝手に整うわけではありません。病害虫の圧が高まる年、天候が崩れる季節、そして剪定や草の管理。こうした作業は手間がかかります。それでも化学的な介入を抑えるなら、現場の観察がより重要になります。鈴木淳之氏のワインが“その年の雰囲気”を強く帯びるのは、こうした日々の判断の積み重ねがあるからだと言えるでしょう。
ラインナップを支える主要品種:ツヴァイゲルト、ケルナー、ピノ、シャルドネ
domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキの品種構成は、多彩でもあります。ただし軸ははっきり。中心に据えられているのがツヴァイゲルトで、赤ワインの顔になっています。
白・ロゼ側ではケルナー・ミュラー・トゥルガウが挙げられます。さらにピノ・ノワールとシャルドネも扱い、畑のキャラクターを複数の表情で見せる設計です。ここで重要なのは“品種を並べること”ではなく、それぞれの性格がどう変換されるかに関心が向いている点です。
- ツヴァイゲルト(赤ワイン):ワイナリーの中心
- ケルナー(白・ロゼ):爽やかさと香りの立ち方に注目
- ミュラー・トゥルガウ(白・ロゼ):厚みと柔らかさのバランス
- ピノ・ノワール(赤):繊細さと輪郭の出方
- シャルドネ(白):熟度と旨味の組み立て
ミレジム重視:同じ品種でも“年”で顔が変わる
このワイナリーはテロワールを重視し、年ごとの雰囲気(ミレジム)を表現することに力を置くとされています。つまり、同じツヴァイゲルトでも、季節の進み方、雨のタイミング、ぶどうの熟度の到達点が違えば、香りと味の解像度も変わる。飲み手にとっては“同じラベルを追いかける楽しさ”が生まれます。
石蔵を改装した醸造所:昭和初期の札幌軟石と“温度の記憶”
醸造所の姿は、ワインの性格に静かに影響します。domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキでは、昭和初期に札幌軟石で建てられたリンゴ保管用の石蔵を改装し、造りの拠点として利用しているとされています。
札幌軟石は加工しやすく、建材としても知られています。石蔵は外気の影響を受けにくい場合があり、発酵や熟成の管理に役立つことがあります。何より、昔からその土地が使ってきた“空間の癖”が残るという点で、ただの作業場とは違う価値を持つでしょう。
伝統的な建物が“素材を守る”
現代のステンレスタンクのように、機械で数値を制御するのとは別の世界です。石蔵のような構造は、温度や湿度の揺れを受け止めながらも、急激な変化を和らげる方向に働くことがあります。ワイナリーが畑の判断を強めるなら、醸造側も“素材に合わせる”姿勢が必要になる。建物は、その意思表示でもあります。
樽熟成、オレンジ、ロゼ:ツヴァイゲルト中心でも“表現の幅”
domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキは、ラインナップの種類でも興味を引きます。ツヴァイゲルトを中心に、樽熟成済みの赤、そしてオレンジワインやロゼ、白ワイン(ケルナー・シャルドネ)などを展開しているとされています。
樽熟成済みの赤は、色や香りの深みをどう受け止めるかが見どころになります。オレンジワインは、白ブドウを果皮と一緒に扱うことで、味わいに複層性が出やすいスタイルです。ロゼは、赤の要素と白の要素のバランスが年によって揺れます。飲み手にとっては“単一品種の物語”だけでなく、“処理の違いが生む物語”も同時に追えるセットになるはずです。
硫黄の扱い:極少量が狙うもの
硫黄を瓶詰時に極少量使用する方針は、単純に“無添加を目指す”というより、風味の保存と表現の両立をどこに置くかの判断です。投入量を増やせば安定性が上がる場合はありますが、その分、香りの出方が変わることもある。極少量にするなら、ワインの完成度や衛生管理、そして醸造の設計がより重要になります。
余市という場所の意味:小規模ワイナリーが語る“年ごとの温度差”
余市は、夏の空気がそのまま秋の熟度につながるとは限りません。天候が積み重なると、熟し方も香りの方向性も変わります。domaine atsushi suzuki ドメーヌ アツシ スズキが“年ごとの雰囲気(ミレジム)”を表現しようとするのは、この土地の性格に対する正面突破でもあります。
小規模であることは、弱点になり得ます。設備や人員、原材料の確保など、いわゆる“選択肢”は限られるからです。それでも小さな体制は、造りの方針をぶらさせにくい。畑で積み上げた判断が、醸造やボトルの最終像まで一直線に届く確率が高くなります。
住所は北海道余市郡余市町登町1731、電話は0135-48-6340として案内されています。訪れる人にとっては、遠い情報ではなく、現場に接続できる距離感でもあります。
希少性は“数”ではなく“体験の密度”:domaine atsushi suzukiを探す方法
小規模ワイナリーのワインは、流通の量が限